英国の伝統を洋上で体感する客船「クイーン・エリザベス」
クイーン・エリザベスは、英国の由緒ある船会社「キュナード・ライン」が運航する、世界で最も有名で格式高いクルーズ船の一つです。単なる移動手段ではなく、古き良き船旅の伝統とエレガンスを現代に伝える「洋上の宮殿」とも称されます。
2010年に就航した3代目のクイーン・エリザベスは、総トン数90,900トン、乗客定員約2,081名。アールデコ調の優雅な内装で統一された船内は、落ち着きと華やかさが共存する独特の空間です。船内には、エリザベス2世女王陛下の肖像画が飾られるなど、英国王室との深いつながりを随所に感じることができます。
クイーン・エリザベスの特徴的な施設と体験
- グランド・ロビー: 3層吹き抜けの壮大なロビーは、船に乗り入れた瞬間から非日常の世界へと誘います。初代クイーン・エリザベスをテーマにした美しい壁画がゲストを迎えます。
- クイーンズ・ルーム: 優雅なボールルームでは、毎日のように伝統的なアフタヌーンティーが開催されます。夜にはオーケストラの生演奏に合わせて、社交ダンスを楽しむ乗客で賑わいます。
- ロイヤル・コート・シアター: 3階建ての本格的な劇場では、ウエストエンドスタイルのプロダクションショーが毎晩上演されます。洋上では珍しいプライベートボックス席も備えています。
- 図書室: らせん階段で結ばれた2階建ての図書室は、6,000冊以上の蔵書を誇り、洋上最大級と言われています。静かな空間で読書に没頭する贅沢な時間を過ごせます。
- ゲームズデッキ: 屋根付きのデッキでは、英国伝統のローンボウルズやパドルテニス、クロケットなどを楽しむことができます。
他の一般的なクルーズ船との主な違い
クイーン・エリザベスが他の多くのクルーズ船と一線を画す点は、そのコンセプトと文化にあります。
| 項目 | クイーン・エリザベス | 一般的な大型カジュアル客船 |
| コンセプト | 英国の伝統と格式 | 楽しさ・気軽さ・最新エンターテイメント |
| クラス | プレミアムクラス | カジュアルクラス |
| 雰囲気 | 落ち着いた大人の社交場 | 家族連れも楽しめる賑やかでアクティブな雰囲気 |
| ダイニング | 客室等級でレストランが異なる階級制(グリルクラス等) | 多くのレストランから自由に選べるフリースタイル |
| ドレスコード | あり(夕食以降)。フォーマルナイトはタキシードやドレス着用推奨 | ほぼ無し(一部レストランで指定がある程度) |
| アクティビティ | 社交ダンス、カルチャー講座、アフタヌーンティー | ウォータースライダー、ロッククライミング、ショーなど |
1. 英国の伝統と格式を重んじるコンセプト
他の多くの、特にアメリカンスタイルの大型客船が、ウォータースライダーやロッククライミング、ゴーカートといったアクティブなアトラクションで「楽しさ」を追求するのに対し、クイーン・エリザベスは「格式」と「伝統」を重んじます。船内では、白手袋のスタッフによるアフタヌーンティーや、ボールルームでのダンスパーティーなど、古き良き英国文化を体験できます。
2. 客室クラスによる階級制ダイニング
クイーン・エリザベス最大の特徴の一つが、客室のカテゴリーによって利用するメインダイニングが異なる「階級制」です。
- クイーンズ・グリル/プリンセス・グリル: スイート客室の乗客専用の高級レストラン。専用のラウンジやテラスも利用でき、よりパーソナルできめ細やかなサービスを受けられます。
- ブリタニア・クラブ/ブリタニア・レストラン: その他の客室の乗客が利用するメインダイニング。こちらも豪華な内装で、格調高い雰囲気の中で食事を楽しめます。 このシステムは、多くの船が採用する「好きなレストランを自由に選ぶ」スタイルとは大きく異なり、キュナードならではの伝統です。
3. ドレスコードという文化
クイーン・エリザベスでは、18時以降のパブリックスペースではドレスコードが適用されます。クルーズ中には、タキシードやダークスーツ、イブニングドレスやカクテルドレスといった正装が求められる「ガラ・イブニング(フォーマルナイト)」が数回設けられます。日中のリラックスした服装から一変し、乗客が一斉にドレスアップする夜の華やかさは、この船ならではの体験です。
まとめ
クイーン・エリザベスは、単に豪華なだけでなく、英国の歴史と文化が息づく特別なクルーズ船です。アクティブなアトラクションよりも、落ち着いた空間で優雅な船旅を楽しみたい方、非日常の社交やドレスアップを楽しみたい方、そして英国文化に深く触れたい方にとって、忘れられない体験を提供してくれる唯一無二の存在と言えるでしょう。

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